ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第82弾!! 昭和のお茶の間を震撼させた史上最強のトラウマ映画!

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 「おいで、おいで、幼い娘。彼女はその朝、悪魔と旅に出た——」

 

 愛らしい少女が突然、血を吐き、弓なりに体を折って激痛に苦悶(くもん)する。画面には不気味な惹句(じゃっく)が踊り、不穏な予感漂うタイトル「震える舌」が浮かぶ。そんな予告編だけで昭和のお茶の間を震撼させた本作は、今なお史上最強のトラウマ映画として名高い。

 

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 大型団地の脇にある草原で泥遊びに夢中になっていた少女・昌子が指先に小さなケガをした。その日から始まる奇妙な異変。食卓でスプーンを落とし、歩行が困難になり、言動に違和感が生じる。そしてある夜遅く、金切り声の悲鳴とともに全身が痙攣(けいれん)、舌を噛んで身悶(もだ)えし始めた。昌子は光や音の刺激で激しい発作を起こす、破傷風に侵されていたのだ。

 

 致死率の高い病魔に魅入られた少女(子役の若命真裕子、体当たり怪演は圧巻!)は、暗幕で光を遮断した病室に隔離されるが、小児病棟の子どもたちの無邪気な笑い声が、汚れた服を着替えさせようとする親心が、予期せぬ血まみれの発作を誘発する。何度も繰り返される注射をはじめ、小さな体に容赦なく加えられる過酷な治療の描写も地味にダメージが大きい。

 

 今ならレッドカード確実な衝撃映像のオンパレードから連想されるのはオカルト映画の古典「エクソシスト」だが、ここに悪魔を祓(はら)う頼もしい神父は登場しない。キリスト教に疎い日本人を「エクソシスト」が恐怖させたのはなぜか? 本作は、その答えを自然界の細菌がもたらす不条理な災厄、破傷風との壮絶な闘いに求めた。先の見えない闘病生活で、渡瀬恒彦と十朱幸代扮(ふん)する両親の平穏な日常は完全崩壊。真っ暗な病室のなかで疲弊し、神経をすり減らす彼らの心はジリジリと絶望に蝕(むしば)まれてゆく…。

 

 原作は芥川賞作家で詩人の三木卓が、破傷風を患った愛娘をモチーフに書き上げた同名小説。監督は「砂の器」という名作を残す一方、「八つ墓村」や「鬼畜」など、映画史に残るトラウマ巨編を連発した野村芳太郎。数々の社会派サスペンスで底知れぬ情念の恐怖をすくいあげた名匠は、「原作を読んでこういう恐ろしさがあるのを知った。僕らが今描くべき恐怖映画だ」と感嘆したという。

 

 脚本に井手雅人、撮影は川又昂、音楽には芥川也寸志と超一流のスタッフをそろえて、新しい恐怖映画を模索しつつ、極限下の人間の内面を生々しく掘り下げ、タフな噛み応えのあるドラマを克明に描き出す。ショッキングだが重厚な野村節が全編に詰まった「震える舌」。あのころ、怖くて仕方なかった“因縁の1本”にぜひ挑戦していただきたい。


山崎圭司(ライター)

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第81弾!! 面白ければなんでもアリ!? キョンシーの世界へ、ようこそ来来(いらっしゃいませ)!

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 失直立不動の硬直姿勢で両手を前に突き出し、重力を無視してピョンピョン飛び跳ね、額のお札をはがすと凶暴化して人間に襲いかかる―—。ゾンビに妖怪、吸血鬼をミックスした摩訶(まか)不思議なキャラクターで昭和ニッポンをお騒がせしたキョンシー。脳を破壊して倒す西洋ゾンビと違い、キョンシーとの戦いは呪いや法術をベースにワイヤーアクションで宙を舞い、カンフーの拳で語らうアジアンテイスト。コワいけれどほっこりとユーモラス。まさに珍味で新鮮な魅力だった。

  

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 劇場で大ヒットした香港産キョンシー映画「霊幻道士」の後を追い、台湾から登場した「幽幻道士」シリーズは、TBSの「月曜ロードショー」で放送されて高視聴率をマーク。お茶の間からキョンシー人気に火をつけ、スピンオフである本作「来来! キョンシーズ」が製作された。日本でキョンシーというと、本家よりもこちらを連想するファンも多く、ブームの起爆剤とする声も根強い。特にファンのラブコールに応え、TBS資本で作られた「来来〜」は、キョンシー作品の面白さのツボをギュッと凝縮した濃いめの仕上がり。ほど良いコワさと痛快アクション、コテコテの笑いが合体し、キッズ層を中心に熱い支持を集めた名番組だ。

 

 キョンシーと並ぶ「来来〜」の代名詞といえば、おしゃまでしっかり者の天才美少女道士テンテン! その愛らしさに淡い恋心を抱く男子が続出し、「天誅(てんちゅう)!」の決め台詞でキョンシーを迎え討つ凛々(りり)しさに女子も拍手喝采。あのころ、テンテンは間違いなく教室の人気者だった。演じるシャドウ・リュウは日本のCMやバラエティ番組にも出演し、中学3年間を日本で過ごしたので日本語もペラペラ。しかも、実際に霊感が強く、私生活で何度もコワい体験をしているのだとか……。

 

 そんなシャドウ演じるテンテンを軸に、イタズラ大好きベビーキョンシー&カンフー名手のチビクロ、身軽なトンボ、食いしん坊の太っちょスイカ頭のお騒がせトリオも元気いっぱい大活躍! 放送当時は子ども向け作品のイメージが強かったが、「来来〜」ではチビクロがキョンシーになったり、愉快な愛されキャラが“まさかの最期”を迎えたりと、かなり波乱万丈。「エッ?」とのけぞるワイルドな展開も昭和のTVドラマならではだ。

 

 さらに、闇の法術を操る悪のコウモリ道士や、風の谷の仙人ジジ助など、怪しげな新キャラも登場。最強の攻撃力を誇る秘密兵器バンボロキョンシー、凶悪なキングキョンシー、テンテンの仲間となる海賊キョンシーに、巨大な蛸壺を着たおかしな特殊霊魂・蛸壺フィフィーも入り乱れ、“面白ければなんでもアリ!”なキョンシーワールドを盛り上げる。

 

 そして、忘れちゃならないのが、ハチャメチャなアドリブ満載の日本語吹替。自信過剰が玉にキズな正義の道士・浩雲(こううん)を、ジャッキー・チェンの声でおなじみの石丸博也が担当。オリジナルではマジメな2枚目である道士役にひょうきんな味わいを与え、さらにはアクション中や口を閉じていても“勝手に”喋り続けるなど、超絶(暴走?)アドリブは神業レベルだ! ほかにも、「ドラゴンボール」シリーズで亀仙人を演じた宮内幸平、「北斗の拳」のラオウ役の内海賢二ら、吹替ファンにはたまらない豪華レジェンド声優陣が大集結。従来のイメージを覆す(?)喋りっぱなしの超絶ハイテンション演技でノンストップの笑いをふりまく。

 

 ちなみに、日本語版の演出は、後に「NIGHT HEAD」を大ヒットさせる飯田譲治監督が手がけ、得意のシュールなギャグを連発。なぜか耳から離れない不思議ソング「キョンシー!!!」は、松本隆作詞&細野晴臣作曲というから豪華さもここに極まれり!

 

 30年前にキョンシーごっこに夢中になったオールドファンも、これがキョンシー初“遭遇”のビギナーさんも、一度観たらクセになるキョンシーの世界へ、ようこそ来来(いらっしゃいませ)!


山崎圭司(映画ライター)

ぴあ×チャンネルNECO強力コラボ連載第80弾!! 座頭市vs.用心棒、さらにはジミー・ウォング!? 破格のエンターテイナーが理想とした“観客へのおもてなし”

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 没後20年である。そうか、もう20年も経つのか…。この原稿を書きながら、’97年6月24日、築地本願寺で営まれた希代のアクター・勝新太郎の葬儀に参列し、霊前で手を合わせたことを思い出していた。

 

 その2年前、ある企画でご本人にインタビューさせていただく機会があった。ご存知の通り、数え切れぬほどの豪快伝説、仰天エピソードで知られる大スターだが、筆者も一端に触れる貴重な体験をした。取材中にもかかわらず、「うまいぞ」とラーメンを出前してもらい、ビールのテキーラ割り(!)をいただき、さらに生ギターと生唄のおもてなし…。霊前ではこの時の歓待のお礼の言葉も添えていた。

 

 失礼。いささか個人的な話が過ぎた。映画・チャンネルNECOの「勝新太郎没後20年」企画である。放送されるのは「座頭市と用心棒」「座頭市あばれ火祭り」(共に’70)、「新座頭市 破れ!唐人剣」(’71)、「座頭市御用旅」(’72)、すなわちシリーズ第20作から23作目までの4本だ。

   

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盲目にして居合抜きの達人、日本映画が世界に誇る“異形のヒーロー”と勝新太郎が初めて出会ったのは’62年のこと。以来、映画はシリーズ計26本を発表し、舞台やTVドラマでも演じてライフワークとした。

 

 シリーズを重ねるごとに、市の必殺剣の強さは超人化していったのだが、それと共に闘う相手にも創意工夫が凝らされていく。’67年、勝プロダクションを設立、製作も兼任した勝新太郎はいっそうサービス精神を発揮する。「座頭市と用心棒」では“世界のミフネ”との夢の頂上対決を実現させ、「座頭市あばれ火祭り」では盲目の悪の将軍・闇公方と偏執狂的な浪人役にそれぞれ森雅之、仲代達矢という二大名優を配し、勝プロ好みの型破りで荒唐無稽かつ劇画チックな一大花火を打ち上げた。そして、「新座頭市 破れ!唐人剣」では香港の大スター、当時カンフーブームをけん引していたジミー・ウォングを日本に招き、映画で異種格闘技戦を開催!! すべては“観客へのおもてなし”の精神がなせるワザなのだった。

 

 もちろん、見せ場はアクションだけではない。「座頭市御用旅」で頑固な老十手持ちにふんした国宝級のパフォーマー、森繁久彌とはお得意の“即興芝居”で意気投合。後に二人は対談でも互いに心酔し合い、こんなやりとりを。「セリフは頭で覚えるのではなく、飲め」「本当はクソにして出しちゃえ」「全部、捨てちゃえ、セリフ。そうすると、グーっと引いてね、おまえさんの全身が撮れる」(文春文庫「泥水のみのみ浮き沈み 勝新太郎対談集」)。

 

 それまでも段取り芝居を嫌い、時には脚本を反故(ほご)にし、セリフやシチェーションを現場で練り直してゆく作業をいとわなかった勝新太郎。そのラディカルな姿勢は「座頭市御用旅」の次に自ら監督した「新座頭市物語 折れた杖」(’72)(映画・チャンネルNECOで10月に放送!)でさく裂する。ライフワークにしていた「座頭市」シリーズには、この破格のエンターテイナーが理想とした“観客へのおもてなし”、演技の“硬と軟”の両方を極めていった軌跡がしかと刻まれている。


轟夕起夫(映画評論家)

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